はじめに:ITインフラエンジニアの私がうつ病になって気づいたこと
こんにちは、ITインフラエンジニアのゆうと(🇵🇭×🇯🇵)です。私は7年目のインフラエンジニア(NW / Linux Server / AWS Cloud)として日々働いていましたが、2026年3月にうつ病と診断されました。
うつ病発症当時のリアルな状況については、以下の記事にまとめています。ITインフラエンジニアがうつ病になった話
突然働けなくなるリスクは、どんなエンジニアにも潜んでいます。メンタル不調などで休職状態になると、仕事の不安だけでなく「お金の不安」が重くのしかかってきます。そこで今回は、私が休職して実感した、「元気な今のうちから、ずっとやっておくべきこと(生活・お金の備え)」 についてまとめました。
普段からやっておくべき「生活やお金」の備え3選
1. 生活防衛資金の確実な確保
突然収入が途絶えたり、休職手当の振り込みが遅れたりした場合に備え、当面の生活費(生活防衛資金)を現金で確保しておくことは最重要です。
- 独身の場合: 1年以内の生活費として 約120万円
- 家族がいる場合: 1年以内の生活費として 約300万円
まずは「1年間、無収入でも生きていける金額」を目標に、日々の貯蓄や家計を見直してみましょう。お金の余裕は心の余裕に直結します。
2. 支出の見える化と支払いルールの明確化
毎月何にいくら使っているのかを把握するため、支払い方法を用途別に明確に分ける仕組みを作りましょう。
| 支出の種類 | おすすめの支払い方法 | 具体例 | 分けるメリット |
|---|---|---|---|
| 固定費 | クレジットカード | サブスク、携帯代、光熱費、家賃、奨学金、各種ローン、投資信託など | 毎月決まった支出でポイントが確実に貯まる |
| 変動費 | デビットカード | 食費、日用品、交際費、趣味の費用など | 口座残高以上使えないため、使いすぎを防げる |
※「〜Pay」系決済の扱いについてPayPayや楽天ペイなどの「〜Pay(スマホ決済)」は便利ですが、際限なく使ってしまうリスクがあります。基本的にはコンビニ等の変動費となるため、デビットカードと同じ扱いにするのがおすすめです。あらかじめ毎月の予算を決めてチャージし、その範囲内で利用することで支出のブレを防げます。
3. 国や自治体の補助金・給付金制度の把握
自分が住んでいる自治体区や国が行っている支援制度は、自分から調べないと誰も教えてくれません。いざという時に役立つので、定期的に自治体のHPや広報誌をチェックする癖をつけましょう。
私は東京都住みなので、以下に東京都の支援事例を紹介します。
事例1:東京都の生活支援ポイント過去、東京都では生活支援として「1万円分のポイント」が配布されたことがありました。こうしたポイントも「〜Pay」に変換してチャージすることで、スーパーやコンビニなど色々な用途に活用でき、生活費の足しになります。参考:東京都くらしのサポート
事例2:東京デジタルアカデミーなどでの情報収集デジタルやITに関する最新の支援や取り組みも要チェックです。参考:東京デジタルアカデミーに関するニュース
他にも「こんな良い制度知ってるよ!」という方がいれば、ぜひX(旧Twitter)のDMやコメントで教えてください!笑
傷病手当金や自立支援医療制度などの知識
万が一、うつ病などの病気で休職することになった場合、生活を守るための強力な公的制度があります。元気なうちにこれらの存在を知っておくだけで、いざという時の安心感が全く違います。
1. 傷病手当金(健康保険)
病気やケガで会社を休んだ期間の生活保障として、健康保険から支給される手当です。
主な支給条件:
- 業務外の病気やケガによる療養のための休業であること
- 仕事に就くことができない(労務不能)と医師に判断されていること
- 連続する3日間(待期期間)を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
- 休職した期間について給与の支払いがない(または給与が手当金より少ない)こと
- 【注意点】 健康保険組合や会社の就業規則によって細かな規定が異なる場合があるため、必ず事前に自社の制度を確認してください。(※退職後も継続給付を受ける場合は、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間が必要です)
支給時期の目安:
- 会社を通じて健康保険組合(または協会けんぽ)へ申請後、約1ヶ月〜3ヶ月程度で指定口座に振り込まれます。日々の生活防衛資金はこの待機期間を乗り切るために必須となります。支給される金額は、直近12ヶ月の標準報酬月額の平均の約3分の2です。
2. 自立支援医療制度(精神通院医療)
うつ病などの精神疾患の継続的な通院治療において、医療費の自己負担額を大幅に軽減する制度です。
- 適用条件:
- うつ病などの精神疾患であり、通院による継続的な治療が必要だと主治医が認めた場合(指定の書式による診断書が必要)
- 適用時期と手続きの流れ:
- 市区町村の担当窓口で申請手続きを行います。審査から認定され、受給者証が手元に届くまでは約2〜3ヶ月かかります。
- 【重要】 受給者証が届く前でも、申請手続き直後にもらえる「控え」を病院や薬局に提示することで、その日から医療費の軽減措置(通常3割負担が原則1割負担へ)を受けられます。
- ※申請時に医師の診断書代がかかるほか、市区町村によっては申請手数料やマイナンバー関連の書類発行手数料がかかる場合があるので少額の現金を用意しておきましょう。
失業保険と再雇用・再就職制度に関する知識
休職の後に退職という形になった場合でも、次の仕事に向けた支援を利用できます。
3. 失業保険(雇用保険の基本手当)
次の仕事が見つかるまでの間の生活を支援する給付金です。うつ病など「病気」を理由とした自己都合退職の場合、通常とは異なる優遇措置(特定理由離職者)を受けられる場合があります。
- 条件(特定理由離職者の場合):
- 離職前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること
- ハローワークで求職の申し込みをし、「現在はいつでも就職できる能力と意思がある」と認められること(主治医による「就労可能」の記載がある意見書が必要です)
- 支給時期:
- 通常の自己都合退職にある「給付制限(2〜3ヶ月)」が免除されます。そのため、待期期間(7日間)満了後、初回の認定日を経て約1ヶ月後には最初の給付金が振り込まれます。
4. 再雇用・再就職に関する制度
病気で退職した場合、企業側の制度や国の制度を利用して社会復帰を目指すことが可能です。
- ① 企業の再雇用制度(ジョブリターン制度など)
- 条件: 在籍していた企業が「退職者の再雇用・復職制度」を設けている場合。完治して就労可能になれば、過去の選考ステップを省略して再入社できる場合があります。
- 時期: 就業規則によりますが、医師の「就業可能」の診断が出たタイミングで企業の人事へ相談・応募するのが一般的です。
- ② 再就職手当(就業促進手当)
- 条件: 失業保険を受給している間に早期に再就職が決まった場合に支給される「お祝い金」のような手当。失業保険の残日数が3分の1以上残っている等の条件があります。
- 時期: 再就職先に勤務を開始した後、ハローワークへ申請手続きを行います。審査を経て申請から約1ヶ月〜1.5ヶ月後に一括で支給されます。
5. 障害年金(休職が長引き、日常生活に支障をきたす場合)
うつ病などの精神疾患が長期化し、生活や労働に著しい支障が出ている場合に、生活を支えるための年金制度です。要件が厳しいため、事前の知識と準備が重要になります。
- 受給条件と初診日の重要性:
- 初診日(その病気で初めて病院にかかった日) から 1年6ヶ月を経過 していること(この日を「障害認定日」と呼びます)。
- 初診日において国民年金・厚生年金に加入しており、保険料の納付要件(健康保険料や年金の未納・滞納期間が一定以下であること)を満たしている必要があります。
- 申請方法と時期:
- 障害認定日(初診日から1年6ヶ月経過後)が到来してから、年金事務所(または市区町村の年金窓口)にて申請手続きを行い、審査を経て受給決定となります。
- 申請には、初診日を証明する書類(受診状況等証明書)、医師が記載した詳細な「診断書」、そして本人のこれまでの病状や日常生活の困難さを詳細にまとめる「病歴・就労状況等申立書」が必要です。
- 【重要ポイント:専門家の活用】
- 精神疾患による障害年金は認定の審査が非常に厳しく、書類の書き方や記載漏れによって不支給になるケースも珍しくありません。手続き自体が非常に煩雑なため、本人自身で無理をして申請するより、「障害年金に特化した社会保険労務士(社労士)」へ無料相談をし、申請代行を依頼するのが最も確実で安心な方法です。
生活やキャリアを立て直すために参考にした書籍
休職中の不安を和らげ、今後の働き方やお金の管理について見直すために、私が実際に読んで参考になった「おすすめの書籍」を3冊紹介します。
- [発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47]
- おすすめの理由: メンタルが落ち込んでいる時や、タスク管理がうまくできない時に「どうすれば楽に生きられるか」の具体的な解決策が詰まっています。
- [発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術]
- おすすめの理由: 自分の特性をいかに仕事に活かし、どうやってサバイブしていくかがリアルに書かれています。休職中、「これからどうやって食べていこう…」と悩んでいる時のキャリアの道しるべになります。
- [【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学]
- おすすめの理由: 「生活防衛資金」の作り方や、無駄な固定費(サブスクや保険)の削り方など、お金がない不安を根本から解消するためのノウハウが体系的に学べます。元気なうちに読んでおきたい、圧倒的な良書です。
【緊急フロー】備えがないまま病気で働けなくなったときの「11の行動手順」
もし生活防衛資金などの「備え」が全くない状態で、突然病気になり休職することになってしまったらどうすれば良いのか。焦らず、以下の順番で対処・手続きを進めて当面の生活を守りましょう。
ステップ1:直後の対応(診断と休職手続き)
- ① 会社への連絡:連続して3日以上会社を休む見込みの場合は、速やかに上司や人事に連絡を入れます。
- ② 医療機関の受診:我慢せずに必ず心療内科や精神科などの病院を受診します。
- ③ 診断書の取得:主治医から「労務不能」であることを証明する診断書を発行してもらいます。
- ④ 休職・欠勤の申請:取得した診断書を会社に提出し、正式に休職の手続きを行います。
ステップ2:当面の「生活費」の確実な確保
傷病手当金が振り込まれるまでの間(手元に入るまで約2〜3ヶ月)をしのぐ緊急の現金が必要になります。借金をする前に、まずは自分の資産から資金を捻出できないか確認してください。
- ⑤ NISAや株式の売却(資産の現金化):新NISAや各種投資信託、株式などを保有している場合は、もったいないと感じてもすべて売却して現金化してください。借金の利息は投資の運用益よりも高くなるケースが多いため、まずは自分の資産を切り崩すのが鉄則です。
- ⑥ 3ヶ月分の生活費を工面(借入)する:手持ちの現金や売却した資産を合わせても、当面(約3ヶ月分)の生活費に満たない場合は、やむを得ず不足分を借りる手配をします。
- ⑦ 借入先の絶対的な優先順位:どうしてもお金を借りる場合は、利子の負担がなく、人生のダメージが少ない順番で頼ることが絶対条件です。
- 【安全】 1.親 ➡ 2.親戚 ➡ 3.親しい友人
- 【要注意】 4.カードローン
- 【最終手段】 5.消費者金融(※多重債務の原因になり休職からの生活再建を著しく妨げるため、極力避けること)
ステップ3:支払いの整理と公的支援の手続き
- ⑧ 社会保険料の分割相談:無給の休職中でも、健康保険料や厚生年金などの「社会保障費」は毎月会社経由で請求されます。払えない場合は絶対に放置せず、会社の人事や年金事務所に「分割払い」の相談をしましょう。
- ⑨ 公的制度の申請(1ヶ月経過後):通院して1ヶ月程度経ったら、当面の生活と医療費をカバーするために「傷病手当金」と「自立支援医療制度」の申請手続きを開始します。
ステップ4:今後のキャリアと長期戦への備え
- ⑩ 復職や退職の相談:体調が少し安定してきたら、今の会社へ復職するのか、退職して転職するのかを上司や人事、産業医と相談します。
- ⑪ 障害年金の検討:万が一、症状が重度で休職から1年半以上経っても働けない状態が続く場合は、「障害年金」の申請も積極的に検討してください。
まとめ:手遅れになる前に、元気な「今」から行動しよう
今回は、私がうつ病で休職した経験をもとに、ITエンジニアが元気な今のうちにやっておくべき生活とお金の備え について解説しました。
- お金の備え: 1年分の生活防衛資金を目標にし、固定費・変動費の支払い方法を切り分ける。
- 知識の備え: 傷病手当金、自立支援医療、失業保険などの公的支援システムを「知っておく」だけで心理的負担が激減する。
- 行動の備え: 借入の優先順位など「最悪のリスク」を理解し、いざ病気になったら迷わず制度利用へのステップを踏む。
うつ病で心身が限界を迎えている状態では、難しい制度を調べたり手続きを行うのは本当に困難です。この記事を読んでいるあなたが元気な状態なら、ぜひ今日から「貯金の見直し」や「利用できる国の制度の確認」を少しずつ始めてみてください。それがご自身の心を守る最大の防護服になります。
この記事が、毎日の業務で疲弊しているエンジニアの方々の参考になれば幸いです。もし役に立ったと感じたら、ぜひX(旧Twitter)などでシェアや感想をいただけると嬉しいです!



